「■ 刀剣乱舞 短編」
▼ 薬堀
【薬堀】うららかな陽だまりの中で
* 薬研×堀川(風味?)
* 30分で仕上げた残念クオリティ
* ほのぼのを目指したのに何故か腐臭
* まだ各々の性格が掴みきれてません
* 出てきてませんが、審神者は男です
とある、暖かい日差しの中の本丸。
ここを統治する主と、主を護る刀……刀剣男士達。
彼らが生活をしている場である。
鳥のさえずりを聞きながら、洗濯を終えた薬研藤四郎はその小さな体には若干大きめのたらいをもって本丸に戻ってきた。
少し離れた場所から、弟達の遊ぶ声と一緒に陸奥守吉行の笑い声が聞こえる。
「(そういえば、大将忙しそうにしてたな)」
弟達が一番懐いているのは、自分達の主である青年なのだが審神者である彼は色々と忙しい。
忙しい時には邪魔をしてはいけないと、弟達も分かっているようだった。
主が構ってあげられない時に弟達の世話をしてくれるのが、自分や兄である一期一振、そして陸奥守吉行だった。
今日は、一期一振が内番で畑仕事の担当なので、陸奥守が面倒を見てくれているのだろう。
「(後で礼を言っておくか……)」
そう思いつつ、縁側に戻ると赤いジャージを着た堀川国広が洗濯物を畳みながらこっくり、こっくりと船を漕いでいた。
一軍で戦い続ける同じ隊員として、一軍の過酷さを薬研はわかっていた。
それに、彼は元々働き者で当番で無くとも手伝い等を率先してやってくれている。
日差しも暖かく、うららかなこの縁側で、ついつい眠ってしまったのだろう。
そんな堀川を見て、薬研は近くに歩み寄る。
畳んでいた途中だったであろう洗濯物を取り、薬研は畳み始めた。
畳む手は止めずに、眠る堀川を見つめる。
戦では常に先陣を切り、確実に敵を仕留める刀には、はたからは見えない。
いつも見える、綺麗な青緑の瞳は閉じられ長い睫が覗いていた。
「!」
あまりにも近くで見つめていた為か、眠りの深い堀川が寄り掛かってきた事に気付けなかった。
薬研の肩に寄り掛かり、すうすうと寝息を立てる堀川を見る。
ここまでしても目覚めないとなると、余程疲れていたのだろう。
洗濯物を畳み終えてしまったが、この状態では動くことが出来ない。
自分よりも堀川の方が背丈も大きく、自分ひとりでは抱えていけないのだ。
「(仕方が無い。起きるまで、肩を貸してやるか)」
起こしてもよかったのだが、あまりにも穏やかに眠っているので起こす事が忍びない。
静かな寝息が、穏やかな昼下がりの音と雑ざる。
偶には、こんな穏やかな感じもいいなと薬研は思った。
「う、ぅ~ん……」
「おっ、起きたか」
「……へ…?」
薄らと堀川が重い瞼を開けると、超至近距離に薬研がいて。
からりと笑う薬研の手元にある畳まれた洗濯物を見て、堀川は全てを悟る。
「あっ、ご、ごめん!洗濯物……!」
「ん?ああ、気にするな。そっちこそ余程疲れていたんだな」
ぐっすりだったぞ、とくすくすと笑う薬研の言葉に堀川は、自分が薬研に体を預けて眠っていた事に気付いた。
みるみる赤面する堀川に、さらに薬研は笑みを深くした。
「ほ、本当にごめん!次、薬研が当番の時僕が代わるから……!」
「ん?いや、気にするな。俺がしたくてしたんだから」
「で、でも……」
それじゃあ僕が落ち着かない、と赤面したまま言う堀川に薬研はふむ、と考えた。
と、その時薬研が動いた。
「ぇ……?」
堀川は大きな瞳を更に丸くする。
先程、自分の額に触れた柔らかくて暖かい感触。
「これでチャラにしといてやるよ」
くす、と笑う薬研の言葉に堀川は自分が額にキスされた事に気付く。
「え、ちょ……!、あのっ……薬研っ」
「どうして」、と哀れな程顔を赤くした堀川は薬研を呼ぶ。自分の心臓の音がうるさい。
自分よりも小さくて幼い筈なのに、どうしてこんなにも。
「んじゃあ、それ、宿題」
「えっ?」
「俺が何で、あんたにキスをしたのか……考えてくれ。そして、それが分かったら、教えてほしい」
綺麗な笑みで薬研は笑う。と、主が薬研を呼ぶ声が二人の耳に入った。
「大将に呼ばれてら。じゃあ、俺は行くぜ」
「あ、う、うん……」
本当ならもっと色々聞きたい事がある筈なのに、頭がパンクしているのか堀川は言葉が出て来なかった。
薬研が去って、一人きりになった縁側。
キスされた額が、まだ、熱い。
その箇所に、そっと触れるとキスされた光景が蘇ってきて慌てて堀川は頭を振った。
「どうしよう……まだ、ドキドキしてる……」
どうして、どうして。
それしか今は浮かばない。
でも。
「いやじゃ、ない……」
むしろ、嬉しいと感じている自分がいる。
堀川が、宿題の答えを出せるのは、そのもう少し先の事――。
* 終 *
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